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HR開始のチャイムと共に担任のスメラギが教室に入ってきて、オレは自分の席へと戻る。 戻りながら無意識にスメラギへと視線を向けていたらしく、バチッと音がしたかのようにスメラギと目が合った。 すぐに視線を逸らしたけれど、スメラギはまだオレを見ているような気がしてならない。そんなことを思っている最中、スメラギの挨拶で朝のHRが始まった。 HRの間、オレはいつもよりスメラギを凝視してしまった。ハクちゃんの声を聞いたことがあるのかと思うと、教師と言う立場にいるスメラギが羨ましくて。 スメラギは、ハクちゃんのことをどこまで知っているんだろう。 ハクちゃんが誰とも話そうとしない理由、いつも眠そうな理由、どこから来て何をしていたのか、家族のことや好きなもの、嫌いなもの……。 字がとってもキレイなことは、知っているんだろうか。生徒の中ではたぶんオレしか知らないはずのことを。 コイツも、知っている。とは、思いたくない。オレだけの秘密にしておきたい。オレだけが知っていたい。 そんなオレの視線があまりにも鬱陶しかったのか、HRが終わる直前、スメラギはオレの名前を呼んだ。 「五十嵐君、どうした?何か俺に言いたいことがあるのかな。ここで話せないような悩みや話なら昼休みに化学準備室においで」 「…ん~悩みってわけでもないんですけどねぇ。先生に聞きたいことがあって。昼休み、行きますね~」 「あぁ、待ってるよ」 ニコッと笑窪を見せて笑うスメラギ。女子生徒から人気なのも頷ける。 見た目は文系っぽいけど、スメラギは化学担当の理系教師だ。授業がない時は大抵、職員室か化学準備室にいるらしい。 愛想のいい笑みを絶やさないまま、教室を出ていくスメラギの背中を見送った。 .
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