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人の良さそうな笑みを浮かべるスメラギに、オレもいつものヘラヘラした笑顔を向ける。オレのこの笑顔は代名詞だ。
「それで、俺に聞きたいことって言うのは?」
「えっとですねぇ、単刀直入に聞きますけど~」
日本人離れしたスメラギの顔と焦げ茶色の瞳を真っ直ぐに見つめながら、オレは口を開いた。
「全校集会があった時、先生は玖珂白桜と教室で何をしていたんですか~??」
ニッコリ、と効果音が聞こえてきそうな笑顔で質問をした。スメラギの瞳が少しだけ動揺の色を見せる。
たぶん、全然違うことを聞かれると思っていたんだろう。ハクちゃんのことをどこまで知ってるのか、どんな声をしているのか、何でもいいからハクちゃんのことを教えて下さい。
まさか、オレがこんな間抜けなことを聞くわけがない。トッキーの話は嘘だということはすぐに分かった。
いや、ハクちゃんの声を聞いたのは本当だろう。そこにスメラギがいたのも。だけど、ただ話をしていただけではないはずだ。
そうでなければ、あのトッキーがハクちゃんの声を聞いただけで上の空になったり、スメラギを必要以上に睨む辻褄が合わない。
トッキーはあの時、結構な衝撃を受ける“何か”を見てしまったんだ。
「……何で、そう思うのかな?」
「トッキーがその場面を見ていたらしくてですねぇ。かなりショックを受けたみたいなんですよ~」
「何を見たのか、南條君本人から聞かないのかな??」
「聞いてもいいんですけど~トッキーは口固いんですよねぇ。まぁそれよりも、誰かに話すことで自分の気持ちに気付かれると、オレが困るんですよ~」
「…君は随分と利己主義なんだね」
「あははっ~そうですよ~」
ハクちゃんのことに関してだけ、ど。それは言わない。
基本的に今までのオレは楽しければ何でもいい適当人間。何かに執着心も無ければ欲もない。
そんなオレが始めて本気で欲しいと思ったものを、いくら幼馴染みの親友とは言えど、譲れない。
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