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しばらく俯いて肩を震わせていたハクちゃんが、胸元で小さな手をぎゅっと握り締めた後。 その大きな潤んだ瞳がオレを上目遣いで見上げ、不覚にもドキッと胸が高鳴った。 困惑しているのが手に取るように分かる。悪いことをしてる気分になりながらもここで引くわけにはいかない。 「ハクちゃん…?」 「……っ」 ゆっくりとハクちゃんのキスされるために出来ているような唇が動く。 ハクちゃんの声を聞きたいと初めて思ってから既に半年以上が経ち、ようやく心待にしていたハクちゃんの声は。 「…五十嵐、さん…っ」 水を吸い込んだような笛のように震えていて、この距離でもやっと聞こえるか聞こえないかの声。それなのに。 ビードロを擦り合わせたような透き通った響きで、聞いているだけで頬が緩むほど可愛い声だった。 「……ハクちゃん。響也、って呼んで…?」 「ひ、……ひび、や…さん…?」 「うん…もっと…」 「響也、さん…」 「もう1回」 「……響也さん」 あぁ……どうしよう。 名前を呼ばれただけなのにこんなに幸せな気持ちになるなんて…もう、このまま死んでもいいかも。 …いや、死んだらハクちゃんに会えなくなるから絶対嫌だけど。でもそれくらい嬉しい。本当に嬉しい。 「ハクちゃん…抱き締めても、いい?」 「へっ??…あ、えと…あの……」 「大丈夫。怖くないから」 欲が出たオレは我慢が出来ず、ハクちゃんの細くて小さな身体に腕を回した。 括れたハクちゃんの胴の辺りを抱き締めて身体を引き寄せる。瞬間、人の心を誘い込むような甘い香りに目眩がした。 身長差が26㎝あるハクちゃんの頭は必然的にオレの胸辺りにすっぽりと収まる。ハクちゃんの腰まである長く、艶やかで豊かな綿菓子のようなプラチナブロンドに指を通した。 .
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