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南条叶貴side あー…だるい。最悪だ。 教室の窓から雨が怒りに狂ったみたいに横殴りに窓ガラスを叩き続けている光景を目にし、テンションが急降下していくのが分かった。 今朝は晴れていたと言うのに、午後になってから雲行きが怪しくなってきたからまさかとは思ってはいたものの。 6時限目が残り15分となった今、突然降ってきた雨に重いため息が溢れた。 今日は階段で筋トレか…。雨の日ほどキツい練習メニューはない。ついに梅雨の時期が来てしまったのか。試合はもうすぐなのに。 小学生の頃から父親が大好きだったこともあって始めたサッカーを、高校3年の今まで続けてきた。 他に趣味や特技を聞かれても答えられないくらいにサッカーだけをやってきた俺は、今まさにインターハイ出場をかけた県大会へ向けて日々練習に励む日々が続いていた。 今日のように雨の日は外での練習が出来ないせいで校舎内で階段や廊下を使っての基礎体力作りと筋トレが多い。 勝つためだと分かってはいても、やはりボールに触れない練習は酷でしかないから俺はあまり好きな練習メニューじゃない。 「……、南条!!南条叶貴(ナンジョウトキ)!!! 」 「あ、はい」 「ぼーっとしてるな。67ページの問1の答えを黒板に書きなさい」 「はい…」 もうじき来る放課後の部活のことを考えすぎていたせいか、数学の授業がまだ終わっていないことを忘れていた。 教師に名前を呼ばれて渋々自分の席から立ち上がり、前に出て黒板に答えを書く。難しい問題じゃなくて良かった。 書く場所が黒板の下のほうだったから、193㎝もある身長もこういうときはめんどくさい。腰を曲げるのがめんどくさい。 「正解だ。もう終わるんだから最後まで集中しなさい」 「はい」 数学教師に小さく返事をして自分の席に戻ろうとして一番最初に目に入ったのは。 .
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