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オレの急降下した雰囲気を感じ取ったのか、ハクちゃんの瞳が怯えたように揺れる。パッと視線を下に逸らして、膝の上にあった両手を強く握り締めていた。
そして震える唇から紡ぎ出された言葉は。
「彩人さん、は…親戚で……一緒に住んで、ます…」
「は……??」
衝撃の2文字では収まらない衝撃。
「とても優しくて…素敵な人、です。だからっ…お願いします……!!教室でのことは…見なかったことに、してもらえません…か?」
――――何で、スメラギを庇うの。
「居候の私を…置いてくれて、たくさん助けて頂いてるん…です。お金を返したくても……バイトは禁止されていて…どうしたら恩を返せますかって聞いたら……」
「セックスさせろって??」
「……っ…強要ではありません!!私も同意で…こうでもしなければ、みなさんに迷惑かけてばかりで…こんなことしか私にはできない、し」
「みなさん??」
思ってた以上に、ハクちゃんとスメラギの関係は複雑そうだ。頭が痛い。オレは理性を最後まで保てるだろうか。
「…一緒に暮らしてるのは…彩人さんの他に後3人、いて……」
「まさかそいつらにも抱かれてるの??」
「……は、い」
これは、まずい。
自分でも恐ろしいくらいに、顔も名前も知らない奴等に強い殺意がわいている。会ってしまったらそのまま殴り殺しそうだ。
何とか出口を持たない怒りを全身の中に閉じ込めて、ハクちゃんが怯えずに話してくれるよう小さく微笑む。
「あ、の……このことは…」
「誰にでも言えるわけないでしょ……」
「ありがとう、ございます…」
「何でお礼なんか言うの?」
「……もし言い振らされたりしたら…彩人さんたちに迷惑が、かかりますし…」
イライラする。自分のためじゃなくてスメラギたちのために言っているハクちゃんに。それほどまでにハクちゃんに想われてるスメラギたちに。
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