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空気が湿気を吸ったように重たい雰囲気を払うように、ハクちゃんの頭をポンポンと撫でる。
少し驚いたような、困惑しているような顔でオレを見つめるハクちゃんに心からの笑顔を向けながら。
「ねぇ、ハクちゃん。オレと……友達になってくれる??」
「えっ…」
「いつも1人で寝ているか窓の外を眺めているだけなんて、学校に来ている意味…ないでしょ~?オレとだけでもいいから、たまにこうして2人でお話しようよぉ、ね??」
「……」
まぁ本当は、オレ“だけ”と話してくれたらそれでいい。オレ以外の奴にはまだハクちゃんと話して欲しくない。
オレの提案にハクちゃんは戸惑っているようで、眉を下げながら視線があちこちさ迷う。
「大丈夫だよ、ハクちゃん。ハクちゃんを困らせるようなことは絶対にしない。オレはハクちゃんと、友達になりたいなぁ」
「…と、も…だち……」
「そう、友達」
「……怖い、です…」
「うん??」
「もし、また……」
そこまで言ったハクちゃんの瞳が大きく揺れたと思った途端。キレイなグレーの瞳から、ポタポタと透明な水滴が溢れだした。
「は、ハクちゃん…!?」
「…っ…」
突然涙を流し始めたハクちゃんに、オレはおろおろとするしかない。拭うこともせずに本能のままに泣くハクちゃんの身体が震えていることに気付いた。
顔は元々白い肌を青白くさせて、血色がいいはずの唇はプールからあがった後のように青紫になっている。泣いているのに表情は冷たく、どこを見ているのか分からない。
「ハク、ちゃん…」
オレはただただ、儚げで今にも消えてしまいそうなハクちゃんの細い身体を抱き締めることしか出来なかった。
「大丈夫、大丈夫だから……」
何度も言い聞かせながら、背中をポンポンと一定のリズムで叩く。しばらくそうしていたからか。
スースーっと穏やかな寝息が聞こえてきて、オレの変な緊張が解けた。
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