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そっとハクちゃんの身体を離して寝顔を覗き込む。涙の後がオレの胸をしめつけた。
ハクちゃんの小さな顔を両手で挟むように包み込み、親指で涙の後をなぞる。青紫色の唇が元の色に戻るように。
唇を、塞いだ。
啄んだり食んだり甘噛みしたり、ハクちゃんの唇の感触を求める。柔らかくしっとりとしていて、オレはキスに夢中になった。
唇の色が少し良くなったら、頬に、目元に、額にキスの雨を降らせる。
「はぁ…ハクちゃん…」
どんどん欲が出てきて止まらなくなるオレは獣のようにハクちゃんの身体を全身で抱き締め、首元に顔を埋めて思いっきりハクちゃんの匂いを吸い込んだ。
何となく気になった、Yシャツの下。もう夏服になったから半袖のYシャツを着る生徒がほとんどなのに。
ハクちゃんは常に長袖のYシャツで、ボタンも一番上までしっかりと止め、リボンも校則通りの付け方をしている。
たぶん、その理由は――――……
ハクちゃんのリボンに手をかけた、その時。
ガラッと勢い良く化学準備室の扉が開いて、オレは慌てて扉の方に目を向けると。そこには。
ミルクベージュの髪色、ラフなナチュラルショートはジャニーズ系を連想させる。
子犬のような目はパッチリ二重で、小さな唇と丸顔が童顔を主張している。それなのに鼻は高く大きめで、可愛い系の顔は眉がつり上がっているせいか、怖い。
身長は170前後くらいか、小さいはずなのに纏うオーラが黒い。シューズの色を見れば2年生だということが分かる。
「えーっと…」
「離せよ糞が」
「……ん??」
「白桜ちゃんから手離せっつってんだよボケ。てめぇみたいなチャラ男が触っていいわけねぇだろがカス」
童顔の容姿からは全く想像もできない言葉の数々に、オレは口をポカーンと開けて固まるばかり。
チッと舌打ちをしながらズカズカとオレとハクちゃんに近付いたと思ったら、オレの腕の中にいたハクちゃんを。
慣れた手付きで、姫抱きにした。
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