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玖珂唯弥side
白桜ちゃんを腕に抱えながら、すっかり日が暮れて誰もいない廊下を歩く。
ヘラヘラと気味の悪い笑みで知ったかぶりのような口で好き勝手言っていた、グリーンの瞳の奴を思い出しては。
チッと大きく舌打ちをして、白桜ちゃんを抱く腕に無意識に力が入った。
「ん……」
力が強すぎたせいか、白桜ちゃんが少し眉間にシワを寄せて唸る。
慌てて力を緩め、白桜ちゃんの柔らかい頬に唇を落とせば。
「…ゆ、いや…くん…?」
ぼんやりと瞼を持ち上げて、綺麗なグリーンの瞳に僕が映った。にっこりと笑って今度は白桜ちゃんの額にキスをする。
「うん。もう少しで校長室だから、そしたら帰ろうねっ!!」
「あ、れ…私……」
「あぁ、さっき一緒にいた人のことっ??大丈夫だよ!!白桜ちゃんが寝てたところを引き取ったからさっ。もう帰ったよ!!」
「そっ、か…唯弥くん、ありがとう」
白桜ちゃんが優しく微笑むと、そこにたくさんの花が咲き誇るような錯覚に陥る。
そんな綺麗な笑顔が自分だけに向けられていることが嬉しくて、僕も皆が可愛いと言って止まない笑顔を白桜ちゃんに向けた。
もちろん、これは心からの笑顔だから白桜ちゃん以外の人に見せる笑顔とは全然意味が違うけど。
「白桜ちゃん、あの…五十嵐先輩、だっけ??あの人と何を話してたのっ?」
「えっ!?……んー…あのね、唯弥くん…」
「うんっ」
「…響也さんに、私と彩人さんが…その、し…してるとこ、を…見られちゃったみたいで……」
「……」
白桜ちゃんの言葉を聞いて、スッと心が冷えていくのが分かる。突然黙る僕に白桜ちゃんも焦ったのか、僕のシャツを弱々しく握った。
別に白桜ちゃんを責めたりなんかしない。僕が一番苛立っている相手は。
「あの糞野郎…」
「な、何??」
「何でもないよっ!!」
これからまた会わなければいけない、変態糞野郎の顔を思い浮かべて無意識に毒を吐いてしまった。
幸い、白桜ちゃんには聞こえてなかったからすぐに笑顔で誤魔化した。
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