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それっきり黙り込んでしまった白桜ちゃんの頭を撫でるのを再開しながら、時計に目を移す。 部活をやっている生徒たちが帰る時刻も過ぎていて、まだ職員室で仕事をする教師も帰る時間帯。 腕の中の白桜ちゃんを見下ろすと、やっぱり眠っていた。 その寝顔は天使のように穏やかで美しくて、いつまでも見ていたくなる。今、僕だけがこの寝顔を独り占めしてることに強い幸福を感じていた。 「待たせたね。さ、帰ろうか」 しかしそれもコイツによって終了してしまった。荷物を持つ反対の手にはこの部屋の鍵が握られている。 白桜ちゃんを抱え上げて、僕と白桜ちゃんの鞄を持った奴より先に校長室を出た。 「……で、あんた何考えてんの」 校長室の鍵を閉め終わった白桜ちゃんの担任、皇彩人を見ずに声をかける。職員室も電気は消されていて、薄暗い廊下を歩いた。 「何が??」 「とぼけないでよ。白桜ちゃんと五十嵐響也を接触させたのは、あんたのせいでしょ。しかも計画的」 「はははっ、うんそうだよ。白桜はどんな様子だった?」 「僕が化学準備室に来たときには白桜ちゃんは寝てたよ。五十嵐響也に抱き締められながらね」 「……そう。五十嵐君とは何か話した??」 「当たり前でしょ。でもあの人、ヘラヘラ笑っててウザかった。しかも白桜ちゃん、目が覚めてから変なこと言い出すし」 「変なこと?」 「そろそろ逃げるのをやめる、とか。それに五十嵐響也、白桜ちゃんと僕たちの関係を知ってた。白桜ちゃんが話したってことだよね」 「そういうことになるね」 「たとえ部屋に2人きりになったとしても、白桜ちゃんがそこまで五十嵐響也に話す必要はない。だとしたら、話さないといけない状況になったってこと」 昇降口から既に職員用玄関に置いておいた靴を履き、白桜ちゃんにも靴を履かせる。 外に出れば、青黒い夜の色が頭の上に広がった。 .
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