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職員用駐車場に止まる、1台の車。後部座席のドアを開けて白桜ちゃんを抱えたまま乗り込んだ。 変態野郎は運転席に乗り込み、エンジンをかける。僕たちが暮らしている家は学校から車で20分かかるところにある。 でも誰にも僕たちが一緒に暮らしていることは知られない。理由は簡単、家は山奥の中にあるからだ。 「…で、いい加減どういうことなのか説明してよ。白桜ちゃんを他人と話させる状況を作った理由を」 「そんなの、今の白桜を見ているのが辛いだけだよ。俺たち以外の人と一切話そうとしない。学校に来ている意味がない」 「……本当にあんた、何考えてんの」 「だから俺は、白桜にいつまでも過去に縛られずに新しい人生を歩んでほしいだけだよ。大切な子の幸せを願うのは当たり前のことでしょ??」 絶対、嘘だ。この変態野郎がそんな良心を持っているとは思えない。 「まぁ、唯弥が見てる俺の部分だけを見たら信じられないだろうけどね。俺が変態になるのはセックスしてる時だけだから。普段は普通なんだよ」 「どうだか」 これ以上話しても無駄だと判断した僕は腕の中にいる白桜ちゃんの頬や髪をを撫でたり、スカートの下から伸びる細い足に触れたりして、心を癒す。 今日、白桜ちゃんと寝るのは“校長先生”である僕の伯父さん。 仕事で遅くなるらしいから、それまで白桜ちゃんには体力温存のために寝かしておいてあげよう。 …いや、でも今日の夕飯の当番は兄貴だ。あの鬼畜が自分が作った料理を食べないなんて、許す訳がない。 下手したら白桜ちゃんに向かって包丁でも飛ばして来そうだから、家に着く頃に起こしてあげないと。 こんな複雑な家族構成の中に遠いのか近いのかよく分からない親戚の白桜ちゃんが来てから、もう1年半。 初めて出会った頃よりも確実に痩せ細った白桜ちゃんの身体を優しく抱き締めながら。 流れる景色を、目で追った。 .
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