468人が本棚に入れています
本棚に追加
/275ページ
飯を食った後はリビングでテレビゲームをしたり、飽きたらDVDを見たりといつものだらだらとした時間をかずと過ごした。
明日は塾だから予習しないと、とかずは夕方になるとそそくさと家に帰っていく。
たまには勉強のことなんて忘れる日が1日くらいあってもいいのに、と思いながら1人でテレビを見ていると。携帯の着信が鳴った。
お袋か、と思いながら画面を見てみると中学時代の野球部が一緒でたまに遊ぶ友達からだった。雨だし遊びの誘いじゃねーだろ、と思いながらも電話に出ると。
『よぉー天!!久しぶりだなー元気か??』
「おう、元気元気!!どうしたんだ?」
『48号線の高速道路の下にある小さな公園分かるか??俺、今その公園の前にいるんだけどさ』
「あー水銀灯だっけ?それがある公園だろ??え、でも今すごい雨だけど大丈夫なのか?」
『まー俺は傘差してるから何とか大丈夫なんだけどさ。お前の高校に“歩くフランス人形”の玖珂白桜って子、いるだろ??』
「姫?いる、けど」
『そのお姫様がさー、俺の視線の先にいるわけよ』
「はぁ!?えっ、姫そこにいんの!?」
学校外で姫を目撃したって言う話も噂も聞いたことがなかった俺は、ビックリして座っていたソファから勢いよく立ち上がった。
『いるいる。いやー、俺も初めて間近で見るからちょっと興奮ってかパニくってんだけどさ』
「え、お前それでパニくってんの!?落ち着いてんだろ!!」
『お前と一緒にすんなよなー。でさ、そのお姫様は傘も差さずにドラム管のところに座ってるわけ』
「は、はぁ!?嘘だろ!?ちょっ、何でだよ!!」
『俺だって分かんねーけどさ。何かドラム管の中っつーの??そん中を見つめてるように見える。何見てんのかまでは知んねーけど』
「ちょっと俺もすぐ行くわ!!!」
俺は携帯を力強く握りしめ、タオルやカッパを家中走り回って探す。適当に鞄の中に詰め込んで傘を持って玄関を飛び出した。
.
最初のコメントを投稿しよう!