468人が本棚に入れています
本棚に追加
/275ページ
所詮、世の中金ってことだろ。全く金持ちはいいよな、楽で。別に一般家庭で育ったことに文句はないけど。
そんな彼女の前の前にある自分の席に戻り、まだ雨を映している窓を見つめる。
最後に数学教師が答えの説明を終えたところで授業終了のチャイムが鳴り響き、ガタガタと床とイスの擦れる音が溢れた。
挨拶を終えればようやく退屈で長かった1日の授業を終えたことに羽を伸ばす生徒たちの賑やかな声が響く。
俺も外が雨じゃなければテンション高めで気合いも入ったというのに、今日はそうもいかない。
「雨降られちゃったねぇ~」
ドンマイ、と俺の肩に馴れ馴れしく手を置いて人の不幸を楽しそうに笑う小学校時代からの腐れ縁の幼なじみ、五十嵐響也(イガラシヒビヤ)を振り返った。
「お前も同じメニューやんだぞ」
「オレはトッキーと違って筋トレ好きだもん。外の方が暑くて無理~」
「試合は全部外だろ…」
「だから試合は嫌いなんだよねぇ」
同じサッカー部のくせに、短髪で黒髪のまさにサッカーしてますな俺とは正反対の明るい茶髪に毎度のことながらイラッとする。
暑苦しくないのかと疑問に思う肩につくくらいの髪の長さ、ピアスを両耳に3つずつ開けていてグリーンのカラコンを入れている、まさに外見チャラ男。
俺よりは高くないが身長も184㎝あり、顔も女好みそうなイケメン…とは、あまり言いたくない。ウザいから。
「あ~、ハクちゃんが目を開けてる」
「そうかよ。人間なんだから目を開けてるだけで反応するとか理解不能」
「だってぇHR終わるまでいつも寝てるじゃん~。貴重なんですぅ」
「興味ない」
響也が“ハクちゃん”と呼ぶのはもちろん玖珂白桜のこと。勝手にあだ名つけてこいつが呼んでるだけだから本人は知らないだろうけど。
知ってたとしても興味ないだろうし、彼女を色んな呼び方で呼ぶ生徒が多いから一々気にも止めないはずだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!