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声をかけた瞬間、姫は肩をびくっと震わせてしゃがみこんだまま顔だけを俺たちの方に向けた。
「…っ…」
「…うわ」
振り返った姫の顔を見て、思わず息をのむ。しりゅーは無意識なのか、小さく漏れた声が後ろから聞こえた。
無理もない、と思う……だって、だってだってだって!!!姫の表情が…めっちゃ色っぽいっていうか、エロいんですけど!?
雨もなんちゃらいい女、だっけ??そんな感じの言葉がめちゃくちゃ合ってるような表情。
濡れた髪が首や顔に張り付いていて、眉を下げながら瞳は潤んでいる。そんでもって姫はしゃがんで俺たちを見上げてるから必然と上目遣いになるわけで。
人形のような大きな目は不安げに瞬きを繰り返す。その度に揺れる長い睫毛からも水滴がこぼれ落ちる。
姫は真っ白なシフォンワンピースだけで、靴は履いていない。そのワンピースも雨に濡れて姫のボディラインをはっきりさせていた。
思わずマジマジと見入ってしまったところで、いくら夏だからと言っても梅雨の今はたまに肌寒いことに気付いて慌てて鞄の中からバスタオルを取り出した。
「ひ、姫…っ…風邪ひくよ!!!」
姫の肩にバスタオルを巻き付けるようにしてかけ、持ってきていた傘を開いて姫の頭の上に差した。
不安げだった瞳が驚きに変わり、ゆっくりと俺がかけてあげたバスタオルの端を掴む。その掴んだ手は本当に雪のように白く、小さかった。
こうして見ても、本当に人形が動いているように見えるくらい、姫の容姿は現実離れしている。同じ人間とは思えない。
「………り、……う」
「えっ……??」
「あ、り…がと…う……です」
「っ!?」
突然のサプライズに、俺は左手に持っていた鞄を落とし、右手に持っていた傘を落としそうになるのを何とか踏みとどまった。
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