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初めて聞いた、姫の声。
プラス、初めて向けられた、姫の微笑み。
嬉しすぎて、ビックリしすぎて、俺は口をパクパクと動かすだけで、上手く声がでなかった。
「おーい天、フリーズしてんなよ。お姫様、初めまして。俺は天の中学時代の同級生で宇賀神志龍って言うんだ。よろしく」
「あ…はい、よろしくお願い、します…」
「……っておい!!何勝手に自己紹介してんだよっ。俺だってまだ姫ときちんと話したことないのに!!」
「いやーまさか返事が返ってくるとは思わなくて。誰とも話さないし誰も声を聴いたことがないで有名だろ?」
「そう、だったけど!!最近はちょっとずつ変わって来てたんだよっ!授業中も起きてるし話しかけられても無視しないし!!!なっ!?姫っ!!」
「えっ…と、はい……これまで、すいません…でした」
「……!?うわっわわわっ!!!ひ、姫と会話してる!!!俺今、姫と話してるっっ。あ、俺は朝霧天磨!!と、隣のクラスなんだっ」
「お前パニくりすぎだろー」
あまりの嬉しさにその場で跳ねたくなるのを、雨のせいで抑える。この状況でパニくらないしりゅーの頭がおかしいと本気で思う。
「とりあえずー、お姫様はどうしてこんなところに傘も差さずに座っていたんだ??」
「あ…えと…」
しりゅーの言葉に姫はゆっくりと立ち上がる。しゃがんでいたからよく見えなかった姫の真っ白で細い脚がワンピースの下から現れて、思わずゴクリと喉を鳴らした。
姫は困ったように視線を落とす。それはドラム缶の穴に向かっていた。俺としりゅーも中を覗くようにして見てみると。
「ウサギ!?」
「かっわいーなー。この子を見てたの??」
「は、い…前にここで拾ったんです、けど……連れて帰ろうとしたときに逃げちゃって…たまたま今日、車で通りかかったとき、見かけたん、です」
「でー、追いかけてきたんだ??」
「そう、です。そしたら…この公園のドラム缶の中に入ったまま動かなくて……」
「だからずっとこうしてこの雨の中、傘も差さずに裸足でいたの??ってか何で裸足??」
「……車の中で靴を脱いで、て」
「車の運転手、ってか一緒に車に乗ってた人は??」
「…………」
姫が答えれば間髪入れずにまた質問を投げ掛けるしりゅー。でも姫は、それっきり俯いてしまった。
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