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聞かれたくなかったことなのか、聞かれても答えずらいことなのか分からないけど、口を開こうとしない姫。
「と、とりあえずさっ!!このままじゃ姫が風邪ひいちまうしっ、うちで温まろうぜ!?」
「まー天の家がここから一番近いしな。暗くなる前に行こう」
「あっ…でも…」
「お姫様はさ、携帯とか持ってるの??見たところ何も持ってないよね。だから家族に連絡も出来なきゃ家に帰れないだろー??」
「……はい」
「おいしりゅー!!!姫をあまり苛めんなよっ。姫、歩きながら話そうぜ!!」
俺の頭の上にはしりゅーが持っていた傘があったけど、俺は姫と1つの傘の中に入った。もちろん、相合い傘がしたかったから。
なるべく優しく姫の華奢な肩を掴んで、支えるようにしながら歩く。
「あっ…ウサギ、さん……」
「俺が連れてくから心配すんなよ。ほら、こっちおいでー」
しりゅーがドラム缶の中に手を伸ばしてウサギを抱き上げる。そういえばしりゅーは家でいろんな動物を買ってたなぁと今思い出した。
「なぁ姫っ、お腹空いてないか!?」
「え、えと…少し、だけ…」
「俺が作ったカレーがまだ残ってんだ!!食べてってくれよっ。こう見えて俺、料理が得意なんだぜっ」
「料理だけ、の間違いだろー」
「何をー!?野球だってめっちゃ得意ですーっ」
「あぁ、料理と野球だけの間違いだったな。その野球だって県大会の決勝で負けたくせにー」
「うっ…うるせぇ!!」
しりゅーも高校に行ってからも野球部に入ったから、たまに練習試合や公式試合で当たったことがあった。
そして今年の県大会でもしりゅーの高校とはベスト8の時に当たり、俺たちが勝った。
しりゅーももちろん坊主頭で、切れ長の目に大人びた顔立ちをしている。身長は俺とほとんど同じで180㎝。
気さくで物事をはっきり言うからよく人の悩みを相談されるような、頼られる奴だ。俺も同い年だけど兄のように慕っている部分がある。
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