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宇賀神志龍side
インターホンが鳴ってからリビングを出ていった天の帰りが遅いから玄関へ行こうと扉を開けたら。
どういうわけか、だぼっとしたTシャツ一枚で風呂上がりのお姫様が俺を見上げていた。
赤く染まった頬に潤んだ瞳での上目遣い。俺とお姫様の身長差ではこの位置からだと大きく開いたTシャツの襟元から中が丸見えなわけで。
「あ、すいません」
ちょっと後ろに下がってくれたからギリギリ見えなくなったけど、その次に与えられたのは、きょとんとした顔で傾げられた首。
はらり、と濡れた白金の長い髪が揺れる。これがすべて無意識だと言うのなら、男の理性の敵としか言いようがない。
ぶわっと顔に熱が集まる感覚がして、慌てて視線をお姫様から天の方に映した。
「て、天……あーお客さんか、って和だったのか」
「お、おぅ!!昼間うちに来てた時に手帳を忘れちまったみたいでさっ。かず、入れよ!!」
「あ……う、ん。おおっお邪魔、しますっ」
俺たちは3人とも同じ中学だからもちろん和のことも知っている。天のお世話役のような立ち位置にいる和とも久しぶりに会った。
でもそんな和はさっきっからお姫様をちらちらと落ち着きなく見て、困惑した表情を隠せていない。
相変わらず弱気そうな猫背は、おろおろとした視線と相まってさらに弱々しく見せる。
「和、手帳見つかったらここにお姫様がいる理由話すからな。先に見つけてこい」
「うっうん……あり、がとうっ」
あまりにもキョドり過ぎていた和が可哀想になって助け船を出してやれば、ホッとしたように天の部屋がある2階へと上がって行った。
「でー、何でお姫様は下を履いてないわけ??つか天、男物の着替えを渡したのか??」
「ち、ちげぇよ!!あーしりゅーはまだ俺のお袋に会ったことなかったっけ。お袋さ、身長が170くらいあって女にしてはでかいんだよなっ」
「なーるほど。で、ぶかぶかだったから下は履けなかった、履いてもずり落ちてくるってことか」
「そう、なんだよな!?姫っ」
天の同意に申し訳なさそうに頷くお姫様は、ぎゅっとTシャツの裾を下に伸ばすようにして掴んだ。
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