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でも今それを聞くのはまずいような気がして、俺の心の中だけで疑問に思うことにした。 リビングにある時計は、8時を回っていて窓の外は真っ暗だ。歩きなら送っていけるけど、近くないなら電車か車を使わないといけない。 こんなお姫様を1人で夜道を歩かせるわけにもいかないし。 「お姫様の家はどこら辺なんだー??」 「……分からない、です」 「えっ!!どーゆことだっ!?」 あり得ない答えに天が目を見開く。和も困惑な表情で動揺を隠しきれていなかった。 俺は冷静に分析しようとするが、自分の家がどこにあるのか分からないなんてあり得るのか。何から聞き出そうか考えていたとき。 ―――――――ピンポーン 「だ、誰か来たみたいだっ。俺行って来るな!!」 天が今日何度目かのインターホンの音にバタバタと玄関へと走っていく。リビングの扉は、開けっぱなしになっていた。 時間的に天の両親ではないと思う。ただの客なら家に上がることもまずないだろうから、呑気に天の帰りを待っていると。 「……ちょっ!!誰っすか!?」 天の焦った叫び声と共に、玄関の方からドンドンと強い足音がこちらに近付いてくる。 ただならぬ雰囲気に咄嗟にソファから立ち上がってお姫様を俺の背中に隠し、和も俺の隣に並んだ。 あの弱気な和が、と内心驚いたがそれも一瞬で開けっぱなしだった扉から入ってきた人物は。 「………」 流れるような漆黒の髪をサイドで緩く縛っているのに、銀縁の眼鏡の奥にある細められた目は何の感情も持っていなさそうで。 “冷酷”という言葉がピッタリな顔。お姫様ほどではないけど白い肌と胸まである髪に一瞬女のようにも見えるが。 俺よりほんの少し低い、それでも高い部類に入る身長と服装で男だとすぐに分かった。 .
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