3

26/36

468人が本棚に入れています
本棚に追加
/275ページ
人を見下すような目。立っているだけで冷たい空気を作り出しているような雰囲気。直感が、囁く。 こいつは危ない、と。 「……どなたですか」 「そこをどけ」 抑揚のない、感情のない声。後ろにいるお姫様がシュッと息を吸い込む音が聞こえた。 「見ず知らずの人間に従うはずがないです」 「そこにいる玖珂白桜と同居してる、と言ったら??」 「えぇっ」 今の空気に背く天の声に、銀縁の眼鏡のレンズがキラリと光ったような気がした。 本当にこの人とお姫様が同居しているのか、証拠も確信もない。むしろ疑ってかかるのが当たり前だ。 「……そうなの、お姫様」 後ろは振り返らずに銀縁眼鏡を睨み付けながら声だけで問えば、ソファから立ち上がる気配がした。 ゆっくりと後ろを見下ろせば、俯いたまま手足が震えているお姫様。やっぱり嘘なんじゃないかと思いながら、お姫様の肩を優しく抱き寄せる。 「……大丈夫。違うなら違うって言えばいいだけのこと」 「…っ」 肩を抱く反対の手でお姫様の髪を撫でる。白金の髪がすごく綺麗で、純粋な日本人なわけがないなと改めてお姫様の家族構成が気になった。 「……おい」 お姫様の震えが治まるように頭を撫で続けていたところに、それまで黙っていた銀縁眼鏡が低く重い声を出した。 その声に、お姫様はビクッと肩を揺らして治まってきていた震えが再び戻ってしまう。 さらに強く肩を抱き締めながら、目だけを銀縁眼鏡に向けて睨み付けた。 「こんなに震えているのに、同居人??ふざけないで下さいよ」 「……ふざけているのはそこの小娘だ。おい小娘、わざわざ俺が迎えに来てやったんだ。とっとと帰るぞ」 お姫様のことを小娘と呼ぶ銀縁眼鏡に、底知れない嫌悪感がわいた。 .
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!

468人が本棚に入れています
本棚に追加