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それに1つ、疑問に思った。
この銀縁眼鏡はお姫様の“同居人”と言った。“家族”ではなく“同居人”と言ったんだ。
容姿から見ても兄妹のようには見えないし、家族を小娘なんて呼ぶ奴がいるだろうか。
そこを問い詰めようと口を開きかけた時、俺の腕の中にいたお姫様が掠れた声で。
「……聖瑛、さん」
銀縁眼鏡の名前らしきものを言った。
「お姫様…??」
「っ、すいません……家に、帰ります…」
そう言って、俺の胸を全く力のこもっていない手で押してくる。そんなものではびくともしないけど、俺は抱き締めていた腕の力を緩めた。
上手く抜け出せたと思っているお姫様は、ふらつきそうになりながら銀縁眼鏡の所へ行く。
「ごめん、なさい…っ…お手数を、お掛けしまた…」
「全くだ。それに何だその格好は。のこのこと男の家に上がり込みやがって。小娘のくせに迷惑をかけるな」
銀縁眼鏡の手が、お姫様が来ていたTシャツの襟を鷲掴む。軽いお姫様の身体はつま先立ちになるほど、上に持ち上げられていて。
うっ、とお姫様の苦しそうな声が聞こえてきた。俺と天が慌てて2人の間に入る。
「何してんだよっ!!姫、大丈夫か!?」
「は、い…」
「…いつもこんな手荒なマネをしてるんですか」
「ちっ違います……!!」
銀縁眼鏡に向けた俺の言葉を、お姫様が否定した。驚いてお姫様の方を見ると、ボロボロと涙を流しながら震えていた。
「ち、がうんです…私が…悪いん、です……聖瑛さんは…本当はとても優しい方、なんです…っ」
どうしてこんな男を庇うのか、俺は理解が出来ない。それともそうしなければいけない何かがあるのか。
今分かることは、お姫様の家族構成は、普通ではないということ。
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