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この短時間でお姫様について数々の疑問が浮かび、思考が追い付かない。容姿が飛び抜けているだけの女の子ではないのかもしれない。
「今日はいろいろと親切にして下さって、本当にありがとうございました……このTシャツは洗ってお返しします」
さっきまでの会話とは売って変わって、よそよそしくなったお姫様。天も自分に言われていると分かっているのに驚きで反応出来ずにいた。
お姫様は窓際に干してあった、まだ乾いていないであろうシフォンワンピースを取り、また銀縁眼鏡の隣に戻った。
「…とっとと帰るぞ」
「は、い…」
俺たちに人として見ていないような目を一瞬だけ向けた後、銀縁眼鏡は踵を返す。お姫様も俺たちに一礼して、その後ろを追う。
リビングの扉を銀縁眼鏡が出ようとしたところで、俺は。
「1つだけ、聞きたいことがあります」
2人の足を、止めさせた。
先に立ち止まったのは言わずもがなお姫様。その後に仕方なくと言った感じで銀縁眼鏡が振り返った。
「……」
無言の威圧感が、早くしろと言っているようでそのあまりもの圧力に怯みそうになる。それでも目を逸らさずに、ずっと気になっていたことを聞いた。
「どうして、お姫様がここにいることが分かったんですか」
「……」
「見たところ、お姫様は携帯や居場所を特定出来るようなものは何一つ持っていないですよね」
「……っ」
俺の質問に表情を変えたのは銀縁眼鏡ではなく、お姫様。
「どうしてここが分かったんですか。ずっと後を着けていたり見張っていたりしてたとしても、登場が遅すぎます。不自然だとは思いませんか」
この見た目からして短気そうな銀縁眼鏡がこんな遅くまで見張っていることもほぼないはず。
お姫様がどこにいるのか調べてから、ここを特定して来たと考えるのが普通だ。
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