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手持ちのものは何一つ持っていなかったお姫様。GPS付きの携帯があればここにいることは分かるだろうけど、その携帯はどこにも見当たらない。 小型GPS発信器でも身体か洋服に着いているのかもしれないと思ったけど、相当な雨に濡れたから意味もなさないしそれらしい物もない。 だとしたら、どうして、ここにいるのが分かったんだろうか。 「それだけ、答えてくれませんか」 「……」 銀縁眼鏡を真っ直ぐに見据える。一瞬だけチラッと見たお姫様の顔は色をなくしたように青白かった。 「……この小娘がどこにいようが、俺からは逃げられない。そういうことだ」 それだけ残した銀縁眼鏡は無表情のまま、リビングを出ていった。お姫様も小さく頭を下げてその後を追う。 返ってきた答えは答えになっていないもので内心苛立ったが、お姫様の様子を見ると知られたくなかったことなのかもしれない。 青白い顔をしたまま出ていったお姫様に気遣いの言葉もかけてやれないまま、玄関の扉の閉まる音が聞こえた。 「…………姫」 天の力ない声を初めて聞いたような気がする。 困惑しているんだ。俺も天も和も、一気にお姫様との距離を近付けすぎて。頭が、混乱しているんだ。 本当の家族はどうしているのか。 同居人だと言った銀縁眼鏡は何者なのか。 人間恐怖症になった原因は何なのか。 Tシャツの下にあった赤い痕は誰のものなのか。 考えれば考えるほど疑問の渦にはまり、もがけはもがくほど抜け出せない。 「天、和」 2人の名前を呼ぶ。俺は他校だから学校でお姫様と接触することは難しい。だから2人にやってもらおう。 「月曜日、学校でお姫様に普通に話しかけてやれ。そして響也、とか言う奴が知ってることは全部話してもらえ」 .
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