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別に分かりたくもないけど。何を考えているか分からない人は何も考えてないって言うし。金持ちのお嬢様は考えることなんてないんだろ。 「あ~あ、担任来ちゃった。じゃ~また後でねぇ」 ヒラヒラと手を振ってここから一番遠い廊下側の自分の席へと戻っていった響也の背中を睨むようにして見送り、視線を教壇に移す。 去年の4月に赴任してきたうちの担任、皇彩人(スメラギイロト)は赴任当初から振りまいている愛想のいい笑顔を浮かべている。 焦げ茶色の髪は韓国人アーティストのような柔らかいクラウドマッシュ、高い鼻と涼やかな目元がどこか日本人離れしている。 身長は188㎝だってー!!と女子がキャハハウフフしているのを聞いたことがある。 瞳の色も髪色と同じで、笑うと笑窪が出来るところが女子生徒から人気らしい。どうもお疲れさまです。 「HR始めるよー」 気さくな喋り方と愛想のいい笑顔からはとても29歳とは思えない若々しさを漂わせている。 俺は他人にあまり興味を示さないからこの担任のことも別に何とも思ってない。 廊下や休み時間に女子生徒に囲まれている姿を横目によく付き合ってられるなと思うことは多々あるけれど。 基本的に限られた奴としか喋らない俺の周りからの印象はクール、寡黙、真面目らしい。 響也と隣のクラスにいる2人としかほとんど会話はしないし、それ以外の奴らとは必要最低限のことだけ。だってめんどくさいから。 好きでもない興味もない奴と上辺だけの付き合いなんてしても意味がない。そんなことしてる暇があったらサッカーをやる。 それは小学生の頃から変わらないせいか、共学校に通っていても女子と深く関わったことはない。関わりたいとも思わない。めんどくさいから。 もちろん今まで彼女なんてものは出来たこともないし、告白をされたことは何回か経験はあるけどまともに聞いたことはない。 姉の男癖の悪さをずっと間近で見てきたせいか、いつの間にか女子という生き物に嫌悪感を抱くようになっていた。 .
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