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掴んでいた小娘の髪をさらに強く引っ張り、苦痛に歪んだ顔を見下ろす。普段は人形のように綺麗すぎる顔が俺の前でだけは崩れると思うと、ぞくぞくした。
「俺が大学に行っている間、外に出たな。その理由を言え。さもなければまた吊るすぞ」
「っ…やっ!!」
「だったら言え。俺が帰るまで家から一歩も出るなと言ったのに、守らなかったのはお前だ。発信器の電波が届かないところに行っていたことも分かってるんだ」
小娘には、俺が作った特殊な発信器が付いている。絶対、誰にもバレないところに。
常にどこにいるのか分かるように、俺から逃げるなんてことが出来ないように。いつも俺の存在がお前を縛り付ければいい。
「どこで、何をしていた。あの男たちは何だ」
「……っう、ごめ、なさ…」
「謝罪などいらない。早く答えろ。そんなに吊るされたいのか、あ??」
「ちがっ…」
「だったら早くしろ。俺をこれ以上苛立たせるな小娘」
睨み付ける。一生、俺の瞳を見るだけで怯えるように。お前の中に、俺を強く深く刻み込む。
「……リビングの窓、からっ…ウサギさんが、見えて…雨に濡れてたから、放っておけなくて…っ」
震えが増した身体を振り絞るようにして吐き出された声は掠れていて、俺の脳髄をゆるゆると刺激してくる。
「でも、走って逃げちゃって…追いかけようとしたけど、玄関の扉は開かなかったから…っ…トイレの窓から、出まし、た…」
小娘が1人で家に残るときは必ず中から開かないように外から南京錠をかけている。それは俺だけじゃなく、あいつらもだ。
不審者やストーカー、万が一のことも考えてだと伯父が言い出したこと。家中の窓も同じだが、トイレの窓だけは小さいし南京錠がかけられるほどの窓ではない。
普通の人間なら通れないほどの大きさでも、この小娘の細くて小さな身体ならあり得たということか。
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