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話に追い付けない。何なんだ、この急展開は。先週までは全然普通だったのに、週末の間に何があったって言うんだ。
響也も同じような、いや俺以上に困惑した表情で天磨たちを見ている。どういうことか、問い詰めようとしたとき、チャイムが邪魔をした。
「昼休みになー!!」と天磨は元気よく、和遥はおどおどしながらも少し嬉しそうに自分達の教室へと戻って行った。
それを見届けた俺と違って、響也は玖珂白桜にゆっくりと近付きながら彼女に手を伸ばす。
何をするんだ、と怪訝に思いながら見ていれば、響也は生徒全員がいる教室内で玖珂白桜を抱き締めた。
「……ハクちゃん」
「響也、さん…あの…っ」
「昼休み」
「…」
「何があったのか、全部話してくれるよね??」
「は、い…っ…」
ヘラヘラしていない、真剣な口調で話す響也を初めて見たかもしれない。俺は天磨たちにもいろいろ聞き出したいが、それ以上に。
かなり玖珂白桜と親密そうに見える響也に一番、問い質したい。彼女と、いつから話すようになったのか、を。
次の授業の教師が来る前に響也は玖珂白桜を解放して自分の席へと戻って行った。
終始、グラスメイトたちからの視線を浴びていたのにものともせず、堂々と。そして玖珂白桜は頬を赤く染めた表情で自分の席に着いた。
その姿はもちろんクラスメイト全員にしっかり見られているのに、当の本人は気付いていないのか、頬に手を添えて物憂げな顔をした。
―――――か、可愛い……っ
そんな心の声があらゆるところから聞こえてきて、俺は何故か面白くないと思った。無償に苛立った。
天磨にも、和遥にも、響也にも……玖珂白桜にも。
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