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HRが終わると教室の中は一斉に騒がしくなり、雨のせいでやや不機嫌気味の俺には鬱陶しいものでしかない。 陽気な足取りで再びやって来た、こいつのことも。 「トッキー、部活行こうかぁ」 「言われなくても」 鞄を肩から下げ席を立つ。響也より少し前を歩きながら教室を出る間際、何となく振り返った先に映ったプラチナブロンドの髪。 窓の外をただぼーっと見つめる横顔は相変わらず無表情で。咄嗟に前を向き教室を出た。 「何で振り返ったの~?」 「雨止まないか見たんだよ」 「止みそうにないねぇ。止んだとしてもグラウンドぐちゃぐちゃだよ~」 俺たちのクラス3年8組は一番最後のクラスだから必然的に教室も一番奥。さほど距離はないにしたって、めんどくさいものはめんどくさい。 「あっ!!ときー!ひびやー!」 7組の前を通りすぎようとしたところで、俺たち2人の名前を大声で叫びやがるのは1人しかいない。今日の俺は不機嫌だからスルーしよう。 「ちょっ!?何で無視すんのー!?」 「あははっ~今トッキー不機嫌なんだよねぇ」 「何で何でっ!?鞄の中から蛙でも出てきたのか!?それとも毛虫!?」 「蛙も毛虫もいないわアホ天磨。お前少しは声のボリューム落とせって何回言えば分かんだよ」 「そんなこと言うなよ、とき!!これが俺なんだから仕方ないだろ?」 「開き直んな」 このアホみたいにうるさいのは朝霧天磨(アサギリテンマ)。THE野球部の坊主頭に軽くチョップをお見舞いする。 野球推薦で入学したこいつはこんなんでも野球部のエース。だけど空気が綺麗さっぱり読めない天然のどアホ。なのに顔はホリが深くてイケメンの類に入る。 身長は181㎝、瞳は黒で肌の色も黒い。俺もサッカーやってるからそこそこ黒いけど。 「テンテンも部活でしょ~??行かなくていいの~」 「行く行く!!部室隣なんだし一緒に行こうぜっ」 「最初からそのつもりだろ」 呆れてため息を吐けば悪びれた様子もなくニカッと人懐っこい笑みを浮かべる天磨の後ろに。おろおろとする見知った顔がいて目があった。 .
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