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そんな姿を初めて見た俺は、早くこいつらから聞き出したくてうずうずしているのを隠すために朝、購買で買った弁当を口の中に詰め込んだ。
「そーいや、ときは姫に自己紹介とかしたのかよ??」
「……」
「あ…南条叶貴さん、ですよね」
突然の天磨の質問に俺が口を開けずにいると、玖珂白桜は簡単に俺の名前を呼んだ。不意打ちのことにドキリとしてしまう。
「…ハクちゃん、トッキーのことは最初から知ってたの~??」
「一応、クラスの皆さんの名前は覚えています。それに響也さんといつも一緒にいる人だったので。響也さんのことも…最初から知ってましたよ」
「姫すっげーなぁ!!俺、記憶力ねぇから覚えるの大変だったぜっ」
響也は曇った目で俺を見た後に玖珂白桜を見て聞いたが、その答えにホッとしたように笑う。逆に俺は気分が沈んでいくのを感じた。
アホ天磨の自慢にもならない話を笑顔で聞いて、天磨の弁当に箸をつけた彼女は卵焼きを食べてとても幸せそうな顔をした。
「……おいひぃ…っ」
もぐもぐと口を動かしながら味の感想を述べる玖珂白桜は……マジで可愛くて。可愛いなんて女嫌いの俺が思うわけないのに無意識に思ってしまうほど、マジで可愛くて。
響也も天磨も和遥も顔を赤くして彼女が食べている姿を見つめる。
俺は、こんなに人間らしく感情を出せるなら今までのはどういうことなんだ、と苛立ちと疑問を持った。
「よ、よかったー!!姫、このくらいで足りるか??もっと多い方がいいか!?」
「いえっ。これでも多いくらいなので本当に有り難いです。……私も自分で料理出来たらいいんですけどね…」
進めていた箸を止めて何かを考えるように目を伏せた玖珂白桜。そんな様子に響也たちも不思議そうな表情で首を傾げた。
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