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面白くないと思ってしまっている自分を振り払うように玖珂白桜と響也から視線を逸らす。もくもくと、1人黙って弁当を食べることに集中した。
俺たちは10分以内に食べ終わったにも関わらず、玖珂白桜の弁当は4分の1も減っていない。弁当箱の大きさも天磨の3分の1くらいなのに、食べるスピードがとてつもなく遅い。
それを天磨と和遥は知っていたのか、玖珂白桜は食べながら話をしようということになった。
「ハクちゃん、食べてる姿もかんわいいなぁ」
「……??」
「…っくぅー!!もぐもぐしてきょとんとしてんのやべぇっ!!」
「ほっ本当、ででですね…っ」
「……」
バカじゃねぇの。普通、思ってても本人目の前にして言うかよ。
「ハクちゃんは食べてていいからね~。で、テンテンとカズくんはいつハクちゃんと話すようになったの~??」
響也の一言で、土曜日にあったことを話す天磨と和遥。宇賀神、とか言う中学時代の同級生も玖珂白桜と話して、風呂上がりの姿を見たんだと思うと、胃がムカムカしてきた。
雨の中、傘も差さずにウサギを見ているとかバカすぎだろ。しかも天磨の、男たちだけの家に上がって風呂に入ってTシャツ1枚で出てくるとか。危機感無さすぎにも程がある。
俺と同じことを思ったのか、話を聞き終わった直後の響也の項垂れようは凄かった。頭を抱えて見たことのない顔で大げさに溜息を吐く。
「はぁ~……ハクちゃん…」
「あ、の…響也、さん…??」
「ハクちゃんが動物を好きなことをよく知っているけど、大雨なのに裸足で傘も差さないでウサギを見てるなんて…ダメだよ」
「うっ…すみま、せん」
「オレが怒ってるのはそれだけじゃないんだけどさぁ……」
怒る、という単語にぴくっと反応した玖珂白桜は何を言われるのかとビクビクしながら元から小さい身体をさらに小さくした。
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