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不安そうに揺れる大きなグレーの瞳は、響也を見上げて少し潤んでいる。そんな瞳を向けられている響也に、何故か嫉妬に近い感情を抱いてしまって慌てて振り払った。 「……大丈夫だよ、ハクちゃん。オレの我が儘でちょっと嫌な気分になってるだけだから」 「え、と…??」 「ハクちゃんは知らなくていいことだよ。だから、そんな目をしないで……」 「響也、さん…」 2人の距離がどんどん近くなっていく。響也の指が玖珂白桜の頬を撫で、それに安心したように頬を預ける玖珂白桜。 甘い雰囲気が流れてきて、見ていられなくなった俺はガタッとイスから立ち上がり2人の世界をぶち壊した。 「そーゆーのさ、2人きりのときにやれよ。目障りだから」 驚いた顔をしている2人を睨みながら低い声で咎める。どうして俺が怒っているのか分かっていないくせに、玖珂白桜は小さく謝罪の言葉を言った。 響也はいつものヘラヘラした笑みを張り付け直して、思ってもいないくせに「ごめんね~」とだけ言って玖珂白桜から距離を取った。 「つ、つーかっ。ひびやと姫のことも教えろよ!!!」 切羽詰まった感じの声で天磨が叫べば、響也は少し考える素振りを見せてから口を開いた。俺たちにではなく、玖珂白桜に向けて。 「ハクちゃん、オレたちが話すようになったきっかけ…あまり話したくないことだよね??」 「あ……いえ、大丈夫です。響也さんのおかげでもう一度人と関わろうと思えるようになれたので…響也さんのお友達なら、話しても…大丈夫、です」 「…………そう」 俺たちにはよく分からない2人だけの話。何故か響也は玖珂白桜の答えが望んでいたものとは違ったのか、曇った表情で頷いた。 .
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