第1章 時のおとずれ

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いつだったか、一晩中流れる星を見ていた。 「わぁ!また流れた!」 「すごいねぇ、すごいねぇ」 飽きもせず、同じ言葉ばかりを繰り返しながら。 星がキラリと流れる度に、ギュッと手をにぎられる。 「きれいだねぇ!すごいねぇ!」 小さな手と手をつないだ、今の自分が失ったものが全て揃っていたあの頃。 この先には幸せばかりがあると疑わなかった。 「ソラ、またこうやって一緒にみようね」 そういえば、あの時、なんて答えたっけな。 澄んだ星空があまりにも眩しくて、すっかり忘れてしまった。 流した涙を拭う方法ばかり考えて、頭がいっぱいになった。 そうして、思い出すこともなくなった。
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