第1章 時のおとずれ

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チャイムが鳴るやいなや、生徒は一斉に各々の放課後の予定を口にしながら席を立つ。 ある者は掃除当番を嘆き、ある者は友人と帰路につく準備をする。 その中でもひときわ華やかな女生徒の群が放課後の廊下を占め、本日も賑やかに声が響く。 「ねぇリュウ、今日は私の番。カラオケ行こーよ」 「いーねー、ミカちゃん」 リュウと呼ばれた男子生徒は、腕を絡めた彼女の腰を引き寄せ、口角を上げた。 彼の生まれつき下がった目尻が、いっそう親しげに二人の距離を縮め、甘い空気を醸し出す。 「でもミカちゃん、俺とやりたいことって、ホントにそれ?」 「リュウ…」
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