第1章 時のおとずれ

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「今日もなかなかのシスコンぶり」 「月子ってば、またそういう言い方を…春斗が真に受けないから良いものの…」 「そっちの方がオイシイじゃないの」 そのままの流れで教室に入っていきそうになる二人を、当惑半分で引き止めようとして「ということだから、ごめんね」と彗は静流に適当にあしらわれてしまった。 先刻の弟といい、この姉弟は自分をぞんざいに扱うらしい事が分かって、肩透かしを食らったと彗はひとりごちる。 考えていた以上に静流は興味を示してくれないらしく、彼が教室を訪れても毎日必ず何かへ没頭している姿が見えた。 そのせいか彼女の教室を行き来するクラスメイト(主に女子だが)の名前でさえ覚えてしまったのだが、彗の本意ではないのだから仕方ない。 そりゃあ静流が見るからに真面目だということは数日教室に通えば明白だし、否定するつもりはないのだが、だからと言って自分が不良扱いされるのは甚だ疑問である。 初対面の弟が判断するのだから見た目の問題かと思い、彗は自分をかえりみる。
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