第1章 時のおとずれ

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彗は、ふぅむと唸った。 「タロー、俺ゲーセン飽きた。全然新しいゲーム入んねーんだもん」 「だな。しばらくはやめとこうぜ。って、おい彗。だから下の方で呼ぶなっつってるだろが」 「俺腹減った。何か食べ行こーぜ、タロー」 「俺の名前は龍太郎だっつの」 襟足を完全に隠すほど伸ばした髪をゲシゲシ掻き上げ、龍太郎は彗の後に続いて歩きはじめる。 必然的に多くの女生徒が二人に付いて動きはじめ、彼らは気まぐれに彼女達へと手をのばしていく。 代わる代わる飛び回る蝶を愛でて楽しんでは、逆に虜にしていることを彼らは何ら罪だと感じていなかった。 その集団を避けて、廊下の端を慌ただしく走り抜ける一人の生徒がいる。 足音も、揺れるスカートにも気を回さず、まっすぐに駆ける彼女に、取り巻きの一人が声をかけた。
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