22人が本棚に入れています
本棚に追加
彗は、ふぅむと唸った。
「タロー、俺ゲーセン飽きた。全然新しいゲーム入んねーんだもん」
「だな。しばらくはやめとこうぜ。って、おい彗。だから下の方で呼ぶなっつってるだろが」
「俺腹減った。何か食べ行こーぜ、タロー」
「俺の名前は龍太郎だっつの」
襟足を完全に隠すほど伸ばした髪をゲシゲシ掻き上げ、龍太郎は彗の後に続いて歩きはじめる。
必然的に多くの女生徒が二人に付いて動きはじめ、彼らは気まぐれに彼女達へと手をのばしていく。
代わる代わる飛び回る蝶を愛でて楽しんでは、逆に虜にしていることを彼らは何ら罪だと感じていなかった。
その集団を避けて、廊下の端を慌ただしく走り抜ける一人の生徒がいる。
足音も、揺れるスカートにも気を回さず、まっすぐに駆ける彼女に、取り巻きの一人が声をかけた。
最初のコメントを投稿しよう!