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教室の後方から顔を覗かせたかと思えば、早急に自分を追っ払おうとする彼女を彗がひたすら引き止めるという光景は、おおよそ10分ほど続いている。
龍太郎は少し距離を置いて眺めていたが、昼休みを彗の横顔見物で終わるのもたまには良いかなと思っていた。
それにしても、と、あらためて〝ホシ子〟 をまじまじと観察する。
日に焼けた肌と髪のみならず、擦り傷のある足は引き締まっていると言えば聞こえは良いだろうが女子特有の柔らかさに欠けるかと思われるし、正直胸のあたりも龍太郎には物足りない。
眼差しに清廉な光でも宿っているのだろうか、確認したい気もするが、それ以前に視界に入る、あの斜めの乱雑な前髪がいただけないのだ。
失礼ながら、龍太郎にとって異性の引力を感じられない彼女にはあらためて茶々を入れる気もおこらず、おとなしく彗の指示に従った格好になっている。
「えー、うそー…あれって近藤先輩?」
「なんでウチのクラスの前に立ってんの?」
堂々とされるささやきに、(しっかり聞こえるように言ってくれちゃって)と、龍太郎は自分に向けられる彼女達の好意へ笑顔を振りまく。
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