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案の定、赤面し慌てる女の子達を見ていると、龍太郎もまんざらではない気持ちになるのだった。
「静流?あの子はまた、どこ行った…」
戸が荒々しく開けられ、教室から生徒が一人、姿をあらわす。
濡れ羽色の髪をなびかせ、陶器のような白い足が翻ったスカートからのぞくやいなや、その人物の眼鏡の向こうの聡明な瞳が、自分をうつすのを感じた。
眉間に刻まれた険しいシワとは打って変わって、一糸乱れず廊下へと足を踏み出した彼女は、龍太郎を人だとは認識したようだが、それ以上でもそれ以下でもない様子だった。
(あれが…柴田月子)
互いに面識もないせいで目を逸らしかけた彼女を逃がすまいと、龍太郎は視界を塞ぐように立ちはだかる。
「君、柴田月子ちゃんでしょ?」
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