第2章 待ち人のおとずれ

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月子は、ずれた眼鏡を人さし指で上げつつ、「だったら…」と苦虫を噛み潰したような顔で視線をある場所へとやる。 「あのお方を、いい加減回収して行って下さいません?」 月子がおずおずと差し出した手のひらの先には、まさに龍太郎が先刻まで眺めていた横顔の主がいたのだが、それにはすぐには反応せず、彼はわざととぼけてみせた。 月子ともう少し話をしてみたい。 彼女はというと、レンズ越しにも鋭利な眼差しが鮮やかで、けれどもそれは、ちっとも龍太郎をうつしてはいないのだ。 龍太郎の中のいたずら心が、首をもたげた。 「月子ちゃんて、すげー頭いいんでしょ?」 「…天城先輩から聞いたんですか?」 彗が言うわけないだろうと反語を含めて彼女に問われた事に、龍太郎は腹の中で声を立てて笑った。 すこぶる警戒されている。
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