第2章 待ち人のおとずれ

11/35
前へ
/87ページ
次へ
彗の声音は興奮した様子もなく、いたく自然だったが断固とした意志を感じさせる、それだった。 「天城先輩、いい加減に…」 「少しの時間でもいいと思ってる。どこかへ行くほど時間がないなら学校でだっていいし、他愛のない世間話でいい」 「待ってください、先輩っ」 答えない静流の代わりとなって、月子は彗を押し戻そうともがくも抗えない力強さを感じれば、その理由に興味がわくというものだ。 憎たらしいくらい、彼は静流しか目に入っていない。 「天城先輩!だいたいどうして、そんなに静流に固執するんですか!今まで何の接点もなかったのに。話をするくらい他に相手してくれる子はいくらでもいるでしょう」 「静流しかいないよ」 間髪入れず、一点の曇りもない表情で、彼は言う。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加