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それは少なくとも月子の心を動かすものであり、彼女自身がそうなることで、彼女は自分の背後に控える友人の機微を懸念することとなった。
月子の肩越しに静流を見据えた彗が躊躇せず一歩を踏み出すことを、何故だか及び腰で受け入れていたのである。
「ちょっとでいいからさ。ね、前みたいに話しよ。静流の話、聞きたい。他の誰であっても代わりはいないし。今俺は、静流と話がしたいんだ」
「………」
「静流は俺の特別だから、静流じゃないと駄目だと思ってるんだけど、そういう理由じゃ、いや?」
「………嫌じゃ、ない…」
漠然と、出し抜かれた心地で静流の声を聞いていたら、多少距離を置いたところに立ったまま薄ら笑いを浮かべる龍太郎が月子の視界に入る。
直感で〝嫌なヤツ〟というレッテルを貼った。
それでも静流が話をするつもりである以上は、この場を明け渡すしかないのだ。
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