第1章 時のおとずれ

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「松浦ホシ子さん…?」 一斉にあたりが静かになる。 下級生のことなので、其の実詳しい事を知る者はいなかったのだろう。 互いの顔を見合わせては、疑問符を浮かべて黙り込む。 ただ一人、龍太郎だけが彗の疑問を解消した。 「ちがうよ。松浦静流さん、だよ」 「………ふうん」 彗の気のない返事に幾分拍子抜けした龍太郎は、恨みがましい視線で彼に訴えたが、当人はどこ吹く風だ。 みるみる興味がなくなったようで、話題に入ってこなくなった彗を先頭に、集団は廊下を前進することになる。 すれ違う生徒に知った者がいれば挨拶を交わし、教師にはとりあえずと頭を下げる。 それでも後続の女子は〝ホシ子〟の話題を続けている。 「ほんとに、何でホシ子ってアダ名なんだろねー」
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