第1章

2/4
前へ
/4ページ
次へ
○ 東京都/足立区/荒川沿い/早朝 荒川沿いの公道でスイーと道路を駆け抜けて行く三機のメック。 時刻は六時を回ろうとしており、まだ眠気が抜けきっていないのか正明は情けない表情で欠伸を漏らしている。 ○ ノーティフロッグ:横部インサート(2S) 正明「ねえねえ、お二方さん? 今日は静岡に行くんじゃないの?」 前傾姿勢で正面のディスプレイを覗きながら問いかける正明。 弘 「…………」 千尋「静岡?」 すると如何せん見当違いな弘と千尋のリアクションが舞い込む。 正明(…………ん?) 疑問符を浮かべる正明。今駆け抜けている場所は静岡の沿岸沿いの道路では 無く、荒川の通りであることを再確認。 正明「なぁ、弘」 もう一度、今度は弘に問いを掛けようとするが、弘の呼びかけによってどもってしまう。 弘 「正明。よく訊いて」 正明 「ん」 弘 「メックバトルを自他ともにココロの底から沸き上がらせる方法は何だと    思う?」 正明「情熱? 思想? 頭脳。気品? それとも何だ」 んー。と喉元にほんのわずかな間、手を添え唸る正明。 それに対し、千尋。 千尋「エレガント! それとー、勤勉がモノを言うわね。そして何より」 弘 「…………」 正明&千尋「「速さなんじゃない?」」 自信満々に応える正明と千尋。むすっと頬を膨らませ、眉をしかめる弘。 弘 「ぶー。どれもコレも違います。今現在、正明にとって必用なのは」 千尋「ずばぁり! アクションがモノを言う。アクロバーティカル!」 ぶいっとVサインを正面ディスプレイに向ける千尋。 ○ミタスティングレイ・横PAN その横にノーティフロッグが並ぶ。 正明「アクロバーティカル?」 弘「ラ」 千尋「そう! アクロバーン!」 千尋の幾度ない割り込みに、弘ひとつ咳払い。気を取り直し。 弘 「きっちり言えばラディカル・アクションね」 正明「つまり?」 弘 「人を更に向こう側に惹き付ける。魅せること」 正明(魅せる……こと) 顎に左手を添え思い悩む正明。対向車線から車両が来ないか危惧し、直ぐさま千尋の背後に回る。 正明「ってことは、レースで勝負しないのか?」 弘 「そ。レースでの『速さ』を主体とせずに『動き』と『魅せ方』で勝敗を    競うの。」 正明「へぇ、なるほど。そういうのもあるのか」 懐からフリスクを取り出し、一口頬張る正明。一瞬その面が崩れる。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加