「はじめて」の色

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『仕方ないなぁ……。あ、あたしはねぇ、森山先輩!』  二人の期待するような視線に耐えられなくなったあたしは、そう口にした。  ……そう言っておけば、外れないと思ったのだ。  森山先輩は、一個上で、女子の人気者。  サッカー部所属で運動神経抜群。顔も格好いい。しかも女の子に優しい。  先輩を本気で好きだと言う女子は、あたしの周りにも何人かいる。  だから、その名前を挙げておけば、二人も納得するし、それ以上追及されずに済むと思ったのだ。  誰もが認めるイケメンなら文句は言われないし、競争率が高ければ告白するようけしかけられる事も無いだろう、と。  なのに……。  あたしはなぜか、そのイケメンでスポーツ万能で女子の憧れの森山先輩から告白されて、あっという間にデートの約束までしてしまった。 ――「うーん、彼氏ができるなら、俺、絶対蒼の方が先だと思ったのにな」  尊は心底不思議そうに言った。  蒼というのは、もちろん蒼葉の事。 「なんで?」 「だって、蒼の方が大人しいし、髪も紅花より長くて男子受けしそうな感じじゃん?」
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