「はじめて」の色

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 ……言えてる。  あたしなんて、全然女の子らしくない。  髪は走る時に邪魔だから思いっ切り短く切っちゃったし、色は黒いし、胸もペタンコだし……。  おまけに性格はガサツで男子への恥じらいもない。  ほんと、なんであたしなんだろう。  先輩なら、もっと可愛い子と付き合う事もできたはずなのに。  もしかして、からかってるだけ?  何かの冗談?  デートの待ち合わせ場所に行ったら、裕太あたりが「ドッキリ大成功!!」って札持って立ってるとか、ないよね……?  あたしの精一杯の見栄が、ぽろぽろと綻び始めた。 「尊、やっぱりあたしのこと絶対モテないと思ってたでしょ!」  尊に悟られるまいと、あたしはおどけてみせる。 「いや、そういう訳じゃないって!紅花には紅花の魅力があるしさ、俺はいいと思ってるけど……」  そこまで言ってふと心配そうな顔をする尊。 「……でも紅花、本当に大丈夫なのか?」 「何が?」 「その森山先輩って人、相当女関係荒いらしいじゃん。裕太が言ってた。何人とも付き合って、一か月も持たずに別れるって、結構あるらしいけど……」  尊の言葉があたしの不安を更に掻き立てた。  やっぱり、何かの罰ゲームとかであたしに告白したんじゃ……。 「大丈夫よ!先輩はあたしを可愛いと思ったから、付き合ったに決まってるじゃん。一ヶ月とか、余裕余裕!あたしは絶対長く続いて見せるから!」
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