「はじめて」の色

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「紅花ちゃん、俺の事、好きなんだって?」  6月の事だ。  突然呼び出された部活終わりの中学校の体育館裏。  あたしの目の前にいるのは、同じ中学の一個上、3年生の森山充紀(もりやまみつき)先輩。  先輩は、体育館の外壁に寄りかかったまま、そうあたしに尋ねた。  程よく引き締まった体にゆるりとまとわりつくストレッチ素材のジャージ。  そこから伸びた筋肉質な首にくっきり浮かんだ筋。  ほのかに漂う制汗剤のせっけんの香り。  あたしは同じくジャージ姿の自分の体と先輩を見比べると、途端に恥ずかしさが襲ってきた。 「は、はい……」  あたしは恥ずかしさを隠すように俯き加減で答えた。  だって、先輩は格好良くて、スポーツ万能で、人気者で。  あたしなんかには手の届かない存在……のはずだった。  だけど、次の先輩の言葉にあたしは耳を疑うことになる。 「じゃあ、俺と付き合わない?」  えっと……。  あれ?  これって告白?  告白って、こんなにあっさりしてるものだっけ?  もっとロマンチックなものだと思ってた。  もっとこう、ドキドキするような……。 「ねえ、どうなの?」  答えないあたしに焦れたように先輩は言った。  あたしにとっては、これが初めての告白。  『じゃあ付き合う』って、付き合うってそんな簡単なものなのだろうか? 「ええと、あの……」 「どっち?付き合う?付き合わない?」  先輩はその気だるそうに少し垂れた目であたしをじっと見た。  まるであたしの心の奥の奥を見透かすかのように……。  背中を嫌な汗が伝った。 「……はい。よろしくお願いします」  心に沸いた疑問を深く考える前に、あたしは頷いてしまっていた。
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