「はじめて」の色

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――こんなことになってしまったのは、それもこれもあたしの性格のせい。  あたし、汐崎紅花(しおさきべにか)はせっかちで、そそっかしくて、そして何より見栄っ張りだ。  森山先輩に告白された時、あたしが頭の中で一生懸命考えていたのは、嘘なんて付かなきゃ良かったって事。  それから……。  先輩に嘘がばれないかって事だった。  こんな面倒な性格に育ってしまったのも、そもそもあたしが双子だからだ。  もしあたしが双子じゃなかったら。  例えば一人っ子とか、年の違う兄弟がいたなら……。  あたしはきっと今ほどせっかちでそそっかしくもならなかったし、見栄っ張りにもならなかっただろう――。  双子というのはこの上無く面倒なもので。 『自分と同じ顔の人間がいるってどんな感じ?』 『同い年の兄弟がいるって、楽しいでしょ?』  あたしが双子だって言うと、途端にみんな決まって興味深々な顔をする。  そして大体同じ事を尋ねる。  でも、多分そういう人たちが思うほど、双子っていうのは楽しいものでも愉快なものでもない。  もっともっと、厄介な話だ。  あたしには生まれた瞬間から隣にライバルが存在するのだ。  しかも見た目も同じ、年も同じという強力なライバルが……。  せめて年が違えば、自然と力の順位がついたかもしれない。  でも、双子じゃそうもいかない。  そんなライバルに勝つために私が身に付けた技。  それは――。
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