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「ただいまー」
「あ、紅花、おかえり」
家に帰るとエプロン姿であたしを出迎えたのは、妹の蒼葉。
つまりは双子の片割れだ。
顔も同じ、背丈も同じ、見た目で違うのは髪の長さくらい。
あたしはショートヘアーで、蒼葉は肩くらいの長さ。
今日は母親の手伝いをしていたのか、蒼葉はその髪を後ろでキュッと一本に結っている。
あたしたちの髪型が同じなら、それから日焼けの程度が同じなら、多分見分けがつく人はあんまりいないだろう。
あ、違いと言えば、おんなじ頭を持って生まれてきたはずなのに、なぜか蒼葉は成績優秀、あたしはてんで駄目。
あたしはテストの度にママに怒られてばっかり。
どうしてこうも違うのか……。
まあ、あたしの方がスポーツは得意だから、バランスは取れてるって言えるかもしれない。
「ママが今日の晩御飯はカレーだって」
「カレーかぁ。あんまり辛くないといいな」
「中辛だって」
「うわー」
「着替えて来たら?」
「そうする。あー、今日も疲れた。いいよね、帰宅部は気楽で」
「……もう、ママの手伝いだって忙しいんだから。誰かさんが手伝わないせいで」
「はいはい、ごめんごめん。休みの日はちゃんとやるからさ」
そう言いつつあたしはニ階の自分の部屋へと向かうため、階段へと足を掛けた。
それからふと足を止める。
「あ、ねえねえ蒼葉」
「何?」
台所へ戻ろうとして、同じく足を止める蒼葉。
「あたしねぇ、彼氏出来たから」
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