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蒼葉の顔に一瞬にして驚きと不安の色が広がった。
「……え、誰?」
蒼葉の目が見開かれ、動揺したように泳いだ。
あたしはそれを見て、自慢げに出来立てほやほやの恋人の名前を口にする。
「3年の森山充紀先輩」
蒼葉の強張った顔の筋肉が、ふっと緩んだ。
「……そ、そうなんだ!良かったね、紅花!おめでとう!!」
満面の笑みであたしを祝福する蒼葉。
あれっ。
もうちょっと、悔しがってほしかったんだけどな……。
実際、蒼葉はいつもこうだ。
あたしが必死になって手に入れたもの。
それを蒼葉は、羨ましがる様子も見せない。
むしろ、澄ました顔をして、まるで必死なあたしを笑っているように思えてしまうのだ。
悔しくてあたしは、ムキになってもっと必死になる。
でも、それを蒼葉は知ってか知らずか、いつも余裕そうな顔のまま。
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