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――『紅花、蒼葉、おばあちゃんがクマのぬいぐるみをくれたわよ。紅花と蒼葉にって』
『紅、ピンクのくまがいい!絶対ピンク!』
双子という強力なライバルに打ち勝つ技。
それはそんな大層なものじゃない。
つまりはこう。
相手より先に自分の欲しいものを主張する。
そうすると、蒼葉は大体後から遠慮がちに言う。
『じゃあ、蒼葉は水色にする……』
それを見てあたしは密かにほくそ笑む。
これで、欲しいものはあたしのものになる。
蒼葉は昔からそうだった。
あたしが欲しいものを取ったあとで、余ったもう片方を取る。
だからあたしたちは今まで一度も、ものの取り合いをしたことはない。
大事そうに水色のくまを抱え込む蒼葉。
勝ち取ったピンクのくまを満足げに見つめるあたし。
なのに、蒼葉を見てると段々水色のくまが、ピンクのくまより可愛く思えてきて……。
そういえば、水色がいいと言った蒼葉は、全然悔しそうな顔をしなかったとふと思い出す。
蒼葉はあたしの残り物を取ったんじゃなくて、きっと最初から水色の方がいいって思ってたんだ。
なのにあたしは、二つのテディベアをちゃんと見比べもせず、ピンクの方がいいって決めつけた。
もっとよく考えて選べばよかった。
そうやって、結局いつも後悔する。
それは中学生になった今でも全然変わってない。
あたしのこの悪い癖は、なかなか直りそうにない……。
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