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事の発端はつい一週間ほど前。
『ねえねえ、紅花は好きな人いないの?』
同じクラスの友人、相田晴菜に、そんな事を聞かれたことから始まった。
『え、あ、あたし?』
『うん』
ニコニコしながらあたしの答えを待つ晴菜。
『紅花のことだもん。告ったら絶対誰でもオッケーしてくれるよ』
同じくニコニコしながらそういうのは大久保香澄。
そんな、好きな人いる前提で言われても……。
しかもあたしそこまで可愛くないし。
実はあたし、好きな人なんていない。
興味がない訳じゃないけど、今は走るのが楽しくて、他の事に目が向かないっていうか、なんていうか……。
でも、それってちょっと変なことなのかも。
実際二人がそういう話で盛り上がってるのを見てると、そう感じてしまう。
好きな人はいないって言ったら、二人は何て言うだろう。
でも、いないものはいないし……。
『別に、いないよ?』
『えーっ!?嘘だー!』
二人から同時にそんな声が上がった。
『紅花、絶対いるでしょー?』
『そうそう、教えてよ!誰にも言わないから!』
あくまでいる前提で話を進めてくる晴菜と香澄。
やっぱり……。
いないって方が変だよね。
ヘンなんて、思われたくないな……。
あたしの見栄っ張りな心がむくりと顔を出した。
『ほらほら、勿体ぶってないで教えなよ~』
『紅花、誰なの?』
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