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「ストーカー?え…それって…貴女は」
思い出せそうな所で、また頭痛が七恵を襲う。
あと少し、あと少しでバラバラになったパズルが埋まりそうな気がした。
「ここは危ないわ、七恵ちゃん私と逃げるわよ」
「え、?!」
急に双子だと名乗るこのはに似た美少女が、七恵の手をとり、逃げるように走り出す。
手には鉄パイプを、握りしめて。
二人の後をこのはが何か叫び声をあげていたが、七恵は振り向くことはなかった。
いや、振り向かなかった…
どこか見覚えのある少女の背中に、懐かしさを感じていたからだ。
ほんのり香る苺の甘い香水の匂い…
七恵は、たぶんこの少女を知っている。
「七恵ちゃん、ここならもう大丈夫よ。姉さんしばらくは動けないと思うわ。」
「あ、の…」
ついた場所は、七恵の通う高校だ。
今は夜中だから、もう誰も残ってはいない。
少し霧が掛かっていて、学校というのはやっぱり夜になると薄気味悪く感じて鳥肌が立つ。
「なに?私に質問したい顔ね…
先に伝えるけど。
私の名前は、秋山このは…
さっきの私に似た人は双子の姉、ちはる。
七恵ちゃんは、ここの世界と元の世界を行き来したせいで記憶が飛んでしまったみたいね。
簡単に言えば、時差ぼけみたいなものかしら。」
「えっと、ごめんなさい…確かに私には記憶が曖昧な所があるみたいだけど…
私にはいろんなことがありすぎて、貴女が…その本当のこのはさんってことも分からないし。
さっきの同じ顔をした貴女のお姉さんっていったけど…思い出そうとすると頭痛がするの」
「七恵ちゃん、思い出せないじゃないわ。
思い出したくないからよ」
その、言葉に七恵はごくりと息を飲む。
思い出したくない…それほど、七恵にとって欠けてたピースは埋まりなくなったももだったのかとまた頭を悩ませる。
そして、本当のこのはだと名乗る少女は優しく七恵の手を握りしめるとゆっくり語りだした。
満月は、刹那雲におおわれた。
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