第1章 デッド・ライン

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放課後のチャイムが鳴る。 七恵は、クラスで仲良しの親友である、えつ子と下駄箱でなにやらキャピキャピした感じで浮かれている。 「七恵ぇ、また帰りにクレープ?太るよ」 「えっちゃん、酷い!クレープは私の大好物だから仕方ないじゃん」 「別にいいけどさ、最近クレープ寄りすぎて太ったんじゃない?背も高いし、部活してるからって油断したら飛べない豚になるよー」 「飛べない豚って…えっちゃんの馬鹿!もういあもん!ふん」 「仕方ないな、コンビニの給料日前だからおごってよね」 「ぶひっ!?」 そして、夕暮れ時である。 七恵たちはいつもの公園のそばにあるクレープ屋につくと、お決まりのホイップとアイスクリームのクレープを頼む。 美味しそうに口にハムスターのように含む七恵に、いつものようにクスクスえつ子は笑う。 まるで、その姿は姉妹のように微笑ましい光景だ。 「もう、七恵ったらほんと子どもみたい。可愛いんだから」 「まだ子どもだもん、あ…えっちゃん。今日さすごく綺麗な転校生きたよね?秋山このはさんって…確か」 その名前を口にした瞬間、風もないのに公園の木々が激しく揺れ動く。 烏たちは、逃げるように空に飛び立つ。 「七恵…気になるの?秋山このはさんのこと」 「え…うーん、綺麗な人だとは思うけど。 私ね、馬鹿だと思うけど…秋山さんをみると、なんだか懐かしい感じがするの。」 「七恵、やっぱりだめ」 えつ子は、とても寂しそうな声で七恵の手首を掴むと、閑散に二人のクレープが地面に落ちる。 訳のわからない様子で、七恵はいつものは違うえつ子の冷めた顔色に肩を震わせた。 「えっちゃん?…こわいよ」 「あの女が、七恵をヤるまえに私が」 二人の息が近い距離まで縮まった時である、 鈍い音が走り、同時に、えつ子がゆっくりと仰け反る。 「え…えっ…ちゃ」 真っ赤な血が、 七恵の顔に容赦なく飛び散った。
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