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真っ暗な暗闇のなか、七恵の意識がうっすらと目覚める。
水滴が一滴、頬に落ちる。
…冷たい。
ここは、洞窟?
「おはよう、七恵~
起きないから、心配したよ?」
「あ、あ…、」
目が覚めると、そこには悪夢が広がる。
秋山このはが、血を浴びたまま笑っている。
言葉がうまく出ない、それは直感で自分も殺されると感じたからだ。
えつ子のように…
「私も、殺すの?」
「んー、なんでぇ?だって、七恵は私のために帰ってきてくれたんでしょ?
この腐った世界に…」
「腐った世界…?なにを、」
「強い意思を持つもの、選ばれた者しか通れない世界…七恵は目的があってきたんだよね。
思い出してよ、七恵は何をしにここにきたの?
私と…また二人で」
白くて細い指を、このはが七恵の指にそっと息をかけるように絡める。が、あまりに落ち着いてるこのはに対しそれが恐ろしくてすぐに振りほどく。
「や、やめて!秋山さん…あなた何者なの?」
「…あら、そっかぁ。
七恵の世界とこの世界じゃ、時空の歪みで記憶が飛んじゃってるんだねー
教えてあげてもいいよ、七恵…
七恵は、この世界にきたことがあるわ。
ここは見た目は普通の街や、友人、家族だけど中身は全く別のパラレルワールドの世界。
みたでしょ?
えつ子って女は斧で二つに裂いたのに、ふつうに生きてた…やつらは、死なないの。
この逆さまの世界の生きる人間は、生きる屍。
でも、首を落とせば再生は遅くなるみたい…
やつらは、生きた人間を食事するの。
だから、七恵を捕まえて七恵を食らい、七恵の住む元の世界の入り口を探してる…
もしやつらが七恵の世界へと一人でもいけば、
その世界もここと同じ、生きる屍の世界へと染まるわ。
だから、私は七恵を守る…
貴女を元の世界へと戻して見せるわ…」
「元の世界…生きる屍…パラレルワールド…
そんなものが、実際にあるわけが…」
「七恵、また説明はあとにして。…来たわ」
洞窟の影から、このはがそっと表を覗くと回りの木々から何かが動く。
手には、あの斧が再び握りしめられる。
「いち…にぃ…さん…よん…七恵、生き延びるためには貴女も戦うのよ」
持たされたのは、大きなスコップだ。
「七恵、殺し合いましょう。
とても楽しい殺しあいを、
私たちが永遠に幸せになるためだけにーーーーー」
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